最近ではあまり見かけなくなりましたが、昔はご自宅で葬儀を行う際、玄関に「忌中」と書かれた紙を貼り、家の垣根や塀には白黒の幕を張る光景が当たり前でした。
現在では葬儀会館で葬儀を行うことが主流となったため、こうした風景を見る機会はほとんどありません。
しかし、この風習には昔の暮らしや地域社会ならではの大切な意味が込められていました。
まず、玄関に貼られる「忌中紙(きちゅうし)」です。
忌中紙は、「この家に不幸があり、現在忌中です」ということを近隣の方へ知らせるためのものでした。
今のように携帯電話やインターネットがない時代、訃報は口コミや近所づきあいによって広まっていきました。
玄関に貼られた忌中紙は、ご近所の方にとって訃報を知る大切な目印だったのです。

一方、家の周囲に張られた白黒幕も同じような役割を担っていました。
白黒幕は「この家で葬儀が執り行われています」ということを知らせるとともに、故人を静かに送り出す厳かな空間であることを表していました。
近所を歩く人も、その幕を見て自然と足音を静めたり、手を合わせたりするなど、故人への敬意を表していたそうです。
そして、これらにはもう一つ大切な意味がありました。
昔のお葬儀は、自宅で行うのが一般的でした。
受付の準備や会葬者へのお茶出し、炊き出し、駐車場の整理、野辺送りのお手伝いなど、多くの役割を地域の人たちが支えていました。
「○○さんのお宅でご不幸があった」と分かれば、ご近所の方が自然と集まり、それぞれができることを手伝う。忌中紙や白黒幕は、そうした地域共同体へ知らせる”合図”でもあったのです。

現在では葬儀会館が普及し、葬儀の多くは会館で執り行われるようになりました。
会場設営なども葬儀社が担当するため、ご近所の方が大勢集まって準備をする機会も少なくなりました。
また、住宅事情やプライバシーへの配慮から、「近所に知らせず、家族だけで静かに送りたい」と考える方も増えています。
こうした時代の変化とともに、忌中紙や白黒幕は次第に姿を消していきました。
しかし、その風習がなくなったからといって、故人を大切に想う気持ちまで変わったわけではありません。
昔は地域全体で一人の人生を見送り、今はご家族を中心に静かに送り出す。
葬儀の形は時代とともに変わっても、「故人に感謝し、安らかな旅立ちを願う」という想いは、今も昔も変わらず受け継がれています。
忌中紙や白黒幕を見る機会は少なくなりましたが、その背景には、日本人が大切にしてきた「人と人とのつながり」と「支え合いの文化」があったことを、これからも伝えていきたいものです。
家族葬の結家
磯貝
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