お葬式やお通夜の前に、故人の枕元に並べられる「枕飾り」。
白木の机の上に、蝋燭や線香、そしてシキミ(樒)の葉が添えられる姿を、どこかで目にしたことがある方も多いと思います。
所説ありますが、「どうしてこの三つなんだろう?」そんな素朴な疑問を解説します。
蝋燭 ― 魂を照らす小さな灯り
枕飾りに欠かせないのが蝋燭の光。
仏教では「光」は智慧や導きを表し、闇を払って進むべき道を示してくれる存在です。
蝋燭の火は、亡くなった方が迷わず旅立てるように照らす道標。
小さな炎には、「安心して進んでください」という家族の願いが込められています。
線香 ― 香りで清め、祈りを届ける
お線香を焚くと、ふんわりと立ちのぼる煙。
その香りには、場を清める力があると信じられてきました。
立ちのぼる煙は、まるで祈りを運ぶメッセージ。
「ありがとう」「どうか安らかに」そんな想いを、空へ、そして仏さまやご先祖へと届けてくれます。
シキミ(樒) ― 永遠を象徴する常緑
お花の代わりに添えられることが多いのが「シキミ(樒)」という常緑樹。
一年中青々と葉を茂らせる姿は、「変わらぬ命」や「永遠」を象徴するとされてきました。
また、独特の香りには邪を払う力があると考えられ、古くから仏事に用いられてきた植物です。
「これからも清らかにお守りします」という意味合いが込められているんですね。
昔から「蝋燭の火は絶やしてはいけない」と耳にしたことがある方も多いかもしれません。
小さな炎を消さずに灯し続けることは、故人の魂を見守る大切なしるしとされてきました。
ただし、現代の暮らしの中では安全や健康が第一です。
夜通し見張っていて体調を崩してしまっては、お通夜や葬儀で故人を見送る大切な場面に出られなくなってしまいます。
かといって、火をつけたまま眠ってしまえば、万が一の地震や事故で火事になる危険もあります。
ですから、「心を込めて灯すこと」こそが大切であって、無理に火を絶やさないことに
こだわる必要はありません。
安全に配慮しながら、できる範囲で故人を想う、それで十分に意味を果たしているのです。

今のように電気がなかった大昔、蝋燭や線香、シキミには「生活を守るための実用的な役割」
もありました。
蝋燭は夜の灯り。
線香は香りで虫を遠ざける効果があり、シキミは強い香気を放つため、虫除けや魔除けとして使われてきました。
そうした生活の知恵が少しずつ仏事の中に取り入れられ、やがて「枕飾り」として体系化されていきました。
そう考えると、昔の人々がどれほど自然と共に暮らし、祈りや安全を結びつけてきたかが伝わってきますね。
蝋燭の光は道を照らし、線香の香りは祈りを運び、シキミの緑は永遠を願う。
枕飾りは、決して形式的なものではなく、小さな炎や香り、葉一枚に込められた“心の贈り物”なんです。
静かな夜、ふと蝋燭の炎を見つめたり、線香の香りを感じたりすると、大切な人への想いがやさしく胸に広がる……
そんな瞬間を支えてくれるのが、この「枕飾り」なのかもしれません。
家族葬の結家
磯貝 文寛
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